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風力発電所における遠隔監視制御システムの導入 ー ウィンドファームつがる ー

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日本最大の風力発電所「ウィンドファームつがる」の建設に参加

青森県北西部の津軽半島、ここに広がる雄大な津軽平野は日本海に面した緑豊かな農林漁業の盛んな地域です。夏は25℃、厳しい冬場でもマイナス5℃程度と東北地方では比較的過ごしやすい緑豊かなこの地域において、約2年半の工事期間を経て国内最大規模となる風力発電所「ウィンドファームつがる」が建設され、2020年4月1日に商用運転が開始されました。この発電所は、「農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律(農山漁村再生可能エネルギー法)」に基づいて農地の一部を発電所に利用しており、発電所の大半が農地となっています。

ウィンドファームつがる

ウィンドファームつがるは南北2つのエリアにGE社製の風力発電機 3,200kW)が38基設置され、総出力は121,600kWとなり、運転開始時点では日本最大の風力発電所となります。この発電量は一般家庭への電力供給量に換算すると約90,000世帯分に相当し、CO2は年間約18万トンもの削減効果が見込まれます。発電した電力は南北の変電所から約10km離れた開閉所を経て東北電力へ全量供給されます。YOKOGAWAは本発電所の建設着工の頃よりシステムプロバイダーとして参加をし、本プロジェクトの中で設計から製作、導入、試運転までの一連にわたる貴重な経験をさせていただきました。

本事例紹介では風力発電所におけるシステムの役割、システムの概要、そしてYOKOGAWAへの期待などについて記載します。世界的に再生可能エネルギーへの取り組みが注力されている中で、国内風力事業の現状や今後の目標などをご紹介します。

 

風力発電事業における遠隔監視制御システムへの期待

風力発電事業をはじめとした再生可能エネルギーへの取り組みは、地球環境を考慮するととても重要です。しかしながら世界の産業は石炭や石油、天然ガス由来のエネルギーによって発展し、今でも化石燃料がエネルギー源全体の80%近くを占めています。近年では風力、太陽光、バイオマスなど再生可能エネルギーへの取り組みが進められていますが、日本は欧州に比べて導入量、技術力ともに遅れており、建設から運用まで、多くの面において技術革新が必要です。
また風力発電をはじめとした再生可能エネルギー設備は、既存電力に比べて小規模で様々な地域に分散しているという特徴があり、人手による運用も困難が伴います。ウィンドファームつがるは南北約10kmに38基の風車が設置されており、北サイトから連系開閉所は約20km離れています。限られた人員で効率的な運用を行うためには遠隔監視および制御のシステムは不可欠であるにも関わらず、国内では風力発電事業向けのシステムを提供している企業がまだ多くは存在していません。我々は本建設プロジェクトにおいて、グリーンパワーインベストメント様をはじめ、建設会社様、電気設備会社様とともに知恵を出し合い、遠隔監視制御システムを構築しました。

変電所内のe-RT3、FA-M3
変電所内のe-RT3、FA-M3

SCADA室での遠隔監視の様子
SCADA室での遠隔監視の様子

このようにYOKOGAWAは、計測・制御・情報の分野において様々な産業で長年にわたり培った技術を、再生可能エネルギー市場の技術発展に貢献すべく取り組んでいます。

 

風力発電事業における遠隔監視制御システムの構成

ウィンドファームつがるにおけるYOKOGAWAの担当は以下の通りです。

  1. 変電所、開閉所の監視制御を行うコントローラ(e-RT3)
    O&M建屋から離れた無人の変電設備や開閉設備から、データを収集し処理します。設備の制御、状態や計測、警報検知の他、電力会社様との通信などを担います。
  2. 出力制御に対応するコントローラ(STARDOM) ※2020年度 機能増設
    電力会社様からの出力制御指令を受けスケジューリングし、Wind Control Systemと協調して出力制御に対応します。なお、信頼性向上のためコントローラのCPU、電源ユニットは、冗長化構成で構築しています。
  3. 設備を遠隔から監視制御するSCADA(FAST/TOOLS)
    変電所や開閉所の監視操作および、風車の状態を監視するための監視操作システムです。変電所、開閉所、風車との通信を行い画面に表示します。また、日報、月報など運転管理業務もサポートします。
  4. 発電所内および各社とのネットワーク環境構築
    発電所内のネットワーク設計、機器の導入および本社や海外企業、YOKOGAWAとのリモート環境構築などセキュリティを含めて導入しました(YOKOGAWAは産業におけるサイバーセキュリティの対策に取り組んでいます)。
  5. 上記にともなうエンジニアリングおよび現地導入作業
    システムの提案から設計、エンジニアリング、導入、試運転のサポートまで自社にてトータルソリューションを実施しました。

風力発電所システム機能概要

 

これからの目標 ー風力発電事業の発展を目指してー

日本における風力発電システムはまだ「風力発電設備の運用」にとどまるのが現状です。電力自由化が進む海外では設備の最適運用によるコスト削減、設備寿命の長期化、予兆分析による故障の回避など様々なシステムの導入が進んでいます。日本においても近い将来、コスト競争力は重要な課題となります。また、不安定電源ということも、導入量拡大の弊害となっています。そのような問題を解決するために、蓄電池を活用した再生可能エネルギーの最大利活用やアセットマネジメントに積極的に取り組んでいきます。

YOKOGAWAは様々な分野の企業の皆様との『共創』を大切にし、企業の枠を超えて再生可能エネルギーの発展に取り組みます。計測・制御・情報の分野において持続可能な社会の実現に貢献します。

商用運転を開始したウィンドファームつがる
商用運転を開始したウィンドファームつがる

業種

  • 再生可能エネルギー

    社会の電源構成およびエネルギーシステムが進化を遂げようとしている状況の中、効率的なエネルギーマネジメントは、多様化するエネルギーシステムを最適化するため、今後の社会に欠かせないものとなっています。
    YOKOGAWAは、再生可能エネルギー発電事業者様や各種エネルギーマネジメント事業者様へのご支援を通じて、理想的なエネルギーマネジメントシステムを創出し、持続可能な新エネルギー社会に貢献します。

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  • 風力発電ソリューション

    風力発電はCO2を出さないクリーンエネルギーであり、地球温暖化対策として大きな期待が寄せられています。近年では、風車の大型化が進んでおり、風況状況が良く、騒音・用地対策にもなる洋上設置も国内で始まっています。
    YOKOGAWAは、風力発電の効率的な事業運営を支えるため風力発電事業全体を見据えたソリューションを提供してまいります。

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